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中国法における横領罪と詐欺罪の違い ― 国際貿易における法的リスク

国際貿易や海外取引において、商品の保管、委託資産、代金決済などに関するトラブルが発生することがあります。

取引相手が委託された商品を返還しない場合や、虚偽の説明によって金銭や商品を取得した場合、多くの企業は「単なる民事紛争なのか、それとも刑事犯罪なのか」という疑問を抱きます。

中国法上、特に混同されやすい犯罪が**横領罪(侵占罪)詐欺罪(诈骗罪)**です。

本稿では、中国法における横領罪の基本的な要件と、詐欺罪との主な違いについて、国際貿易の観点から解説します。

横領罪とは何か

中国刑法における横領罪とは、他人から保管を委託された財産や、遺失物などを不法に自己のものとし、返還を拒否する行為を指します。

横領罪の最大の特徴は、

最初は適法に財産を保有していたが、その後に不法領得の意思を生じること

です。

つまり、財産は当初から欺いて取得したものではなく、適法な占有の後に不法占有へと変化する点に特徴があります。

横領罪の主な要件

1. 適法に財産を保有していること

国際貿易では以下のようなケースが考えられます。

  • 倉庫会社が保管している商品
  • 販売代理店が預かる商品
  • 検品用サンプル
  • 業務委託先が保有する設備
  • 他社のために管理する資金や資産

これらは当初の占有が適法です。

2. 後に不法領得の意思が生じること

例えば、

海外メーカーから保管を依頼された商品を、代理店が無断で第三者へ販売し、売却代金を自己の利益として取得する場合です。

この時点で適法な保管から不法占有へと変化します。

3. 一定以上の価値があり返還を拒否すること

中国法では一定額以上の財産価値が求められます。

また、権利者から返還要求を受けたにもかかわらず返還を拒否することが必要となります。

国際貿易における典型例

欧州企業が、中国国内の取引先へ30万元相当の産業機械を一時保管目的で預けたとします。

後日返還を求めたところ、中国側企業は「紛失した」と説明しました。

しかし実際には第三者へ売却し、その代金を取得していました。

この場合、

  • 当初の占有は適法
  • 後から不法領得の意思が発生
  • 財産価値が高額
  • 返還を拒否

という要件を満たす可能性があり、中国法上の横領罪に該当する場合があります。

横領罪と詐欺罪の違い

最大の違いは、

不法取得の意思がいつ発生したか

です。

横領罪

最初は適法に財産を取得します。

その後になって返還しない意思を持ちます。

例:

物流会社や代理店が預かった商品を返還しないケース。

詐欺罪

最初から不法取得を目的としています。

例えば、

  • 虚偽の会社情報を提示する
  • 偽造書類を提出する
  • 実際には生産能力がないのに受注する
  • 前払金を受領後に逃亡する

などの場合です。

契約締結時点から履行意思がなかったことが証明されれば、詐欺罪に該当する可能性があります。

国際企業へのアドバイス

中国企業との取引では、以下の資料を適切に保管することが重要です。

  • 売買契約書
  • 発注書
  • 船荷証券(B/L)
  • 倉庫証券
  • 送金記録
  • メール・チャット履歴
  • 検品報告書
  • 納品書

これらの証拠は、民事訴訟、仲裁、刑事告発のいずれを選択すべきか判断する上で重要な役割を果たします。

呂強弁護士コメント

横領罪と詐欺罪はいずれも他人の財産を不法に取得する犯罪ですが、本質的な違いは以下の点にあります。

  • 横領罪:適法に占有した後で不法領得する
  • 詐欺罪:最初から欺罔行為により財産を取得する

国際貿易において商品や代金に関する紛争が発生した場合は、早期に専門弁護士へ相談し、適切な法的対応を検討することが重要です。

呂強弁護士

中国における国際商事紛争、債権回収、契約紛争および刑事案件を専門としています。

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